ワンマンライブに寄せて

歌がなぜ生まれるのか。そんなことをずっと考えてきました。

僕が最初に作った鼻歌は、小学校4年生のとき。
「凧を追いかけてたら、転んで足をすりむいて、僕はとても痛いよ~」
という内容なのですが、大人になってから作った歌も、
「恋の悩みで胸が痛いよ~」
みたいな内容なので、今も昔も、言ってることはあまり変わってないようです。

とにかく、そんな感じで、いろんな”痛み”をきっかけに、歌を作ってきたのですが、最近あることに気づきました。
多分、もっと早く気づくべきだったのですが、どうやら歌を生む原動力は”痛み”だけではないっぽいのです。

例えば、湖に夕日が沈むとき、ちょうど水鳥が飛び上がって水面にできた波紋を眺めると、その上を葉っぱがゆらゆらと一枚揺れている。
そんな光景を見たときに、”嬉しい”とも”切ない”とも言えない、まだうまく言葉では言えないような感情がぐぐぐと沸き上がってきて、
胸が少し熱くなったかと思うと、ポ~ンとメロディーが生まれたりするのです。

2014年。僕は一年間、歌を作り続けました。それこそ、溢れるように歌が生まれ続けました。
心の水面を揺らす、その大きな原動力をくれたのは、大切な仲間との出会いでした。

まず、僕はスイッチ・パブリッシングの新井敏記さんに出会いました。それがすべての始まりでした。
新井さんに誘われて、2014年からRainy Day Books & Cafeでイベントをすることになりました。最初に決めたイベントの内容はこんな感じ↓

記念すべき第一回は1月11日、小説家の戌井昭人さんを呼び、朗読をしてもらいました。そして僕は隣で歌いました。
同じ朗読の同じ言葉でも、マイクを通すと会場の響き方が変わり、ぐっと濃密な空気に満ちていく瞬間がありました。
このとき音響エンジニアとして参加した伊藤豊が、この日からラブナイトの構成作家として、仲間に加わりました。

3月11日は朗読劇『銀河鉄道の夜』のメンバーが集いました。宮澤賢治の言葉が雪のようにRainy Dayに降り注ぐ夜。
静けさの中で激しく燃えるような熱を、写真家・朝岡英輔のシャッターが完璧に捉えていました。この日、彼はラブナイトの仲間に加わりました。

5月11日のゲストは黒田征太郎さん。机の上でクレヨンでイラストを描いていく模様を映像作家の高山玲子がリアルタイムで追いました。
演劇のようでもあり、映画のようでもあり、今まで観たことのないライブペインティングがそこにありました。
この日から彼女が仲間に加わりました。

僕はといえば呑気なもんで、Rainy Dayのいつもの椅子に座り、いつもと変わらずゲストのお話を聞いて、ただただ歌っていただけなのですが、気づけば周りにはたくさんの仲間がいました。いつのまにか、僕らはチームになっていたのです。
誰が言い出したか、僕らは自分たちのことを「ラブナイツ」と名乗るようになりました。

まるでロールプレイングゲームのようですが、仲間ができれば、次にすることは旅です。ラブナイツは旅に出かけるようになりました。

7月11日。ゲストの坂本美雨さんが猫好きで、そして鉄道も好きだと知って、ある猫に会いたくなりました。
それは、かつて、千葉のローカル鉄道の無人駅で出会った可愛い猫でした。
僕らは徹夜で線路沿いを歩き、房総半島を南下し、あの無人駅へ向かいました。そこには、会いたかった猫はもうおらず、別の猫がいました。
せっかくなので、その猫の前でギターを弾きました。なぜだかよくわかりませんが、胸が熱くなりました。歌が生まれました。

12月11日。小説家の柴崎友香さんが作品の中で、世田谷で目撃したタヌキのことに触れていたので、僕らはタヌキ探しをしました。
写真家・朝岡英輔はその姿をカメラに捉えようと、10日間世田谷を捜索しました。主に聞き込み調査です。
近隣住民の目撃証言から次第にタヌキ出没地帯が分かり始めました。「赤堤2丁目に確実にいる!!」
タヌキの好物といわれる柿をお供え物にして、タヌキを呼び出す祭りらしきことをしながら、タヌ待ちをしました。
結局、タヌキは最後まで姿を表しませんでしたが、やはり歌が生まれました。

それにしても、旅というのは、なぜこうも、出発前に思い描いていたようにいかないものなんでしょう。
結局、探してた猫もいなかったし、タヌキもいなかったし、そもそも何でこんなことしているんだろう、、などと考え出したらキリがありません。
でもそんな無駄足とも思える旅の帰り道には、決まっていつも歌が生まれるのでした。それも飛びきり美しい歌が。

来る2015年3月11日。僕はこれまでにラブナイトで生まれた歌たちを歌います。音を奏でる新たな仲間たちとともに初のバンド編成のライブです。
映像やスライドショーもお見せできたらと思います。この一年間のラブナイツなりの旅の報告会、そして新たな旅への出発式をできれば、と思います。

なんだかカッコつけて書きましたが、相変わらずのドタバタ珍道中です。きっと、思っていたのと違う”無駄足”な夜になることでしょう。
でも安心してください。僕たち無駄足には自信があります。
帰り道、胸のどこかで小さな波紋がふわっと広がりますように。ギターを持ってRainy Dayでお待ちしています。

小島ケイタニーラブ